『ノルウェイの森』を読むと今でも引き裂かれそうになる

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こちらの記事を見かけて、タイトルに同意しかなくてつい書きたくなってしまいました。ちょっと暗いテーマなのですが、いつものように口語体のまま書きたいと思います。

「ねえ、あれは本当に淋しいお葬式だったんだ。人はあんな風に死ぬべきじゃないですよ」 下巻p252 村上春樹のファンタジー冒険小説を読んでいてもこんなふうに思うことはほとんどないんだけど、「ノルウェイの森」を読んでいるととてもつらい気持ちになってしまう。この本を初めて読んだ17歳のときもそうだった。あのときはショックが大...

私と『ノルウェイの森』

私が大学で日本文学を学びたいと思ったきっかけは『ノルウェイの森』です。初めて読んだ中学生のときは「なんだか難しい話だなあ」としか思っていませんでした。今思うと中学生でこれを読んでも大人の世界すぎて何が何だかわからないはずですよね。

高校に入ってすぐ「直子」と仲良くなって、私には「ワタナベくん」という彼氏ができて、グループでよく遊んでいました(あくまでも仮名です)。ワタナベくんはたぶん『ノルウェイの森』を読んだことがあったと思いますが、演じているのではなく素で「幸せになる努力をしなさい」と言うような人でした。最終的に私よりも直子と一緒に居ることを選び、その後直子は自ら命を断ち、初めて身近な友達が亡くなるという経験をした16の春。
こんな小説みたいなことが起こる確率なんて高くないだろうと今でも思います。私には永沢さんもレイコさんもいなかったですが、それから多くの友達がキズキやハツミさんのように自分から死を選んでいきました。
直子が死ぬ前に、「いつまでも私のことを忘れないでいてくれる?」と言ったのをよく覚えています。今思えば、『ノルウェイの森』の直子も同じことを言っていましたね。だからこれを言った時点で二人の直子は死を覚悟していたんだろうな、と思います。
『ノルウェイの森』はファンタジーではなく、私にとってはシンプルな恋愛小説であり、私自身の物語でもあるのです。だから卒論でも『ノルウェイの森』を扱いました。

ブログを読んで

上記のブログの「あのときはショックが大きくてなかなか立ち直れなかった。」という部分を読みながら、ああこの方も私と同じ痛みを感じたんだな、と思ってちょっと涙がでてきました。この作品は本当に引力を持っていると思うのです。色んな共感を呼びます。
親しい人が死んだことはなかったと書いていらっしゃいますが、

「僕はもう既に矛盾も割り切りも内包してしまっており、いまさら死ぬことはないだろう。それにともない少しずつ失っていった「正しさ」をこの本の中にみつけ、なつかしい気持ちになり、同時に悲しく思う。

「ノルウェイの森」を読むのはとてもつらい より

という文にぶんぶんと頭を振るくらい共感できました。
私は二人の直子が重なってしまって、それから何度も自分の中をえぐられるような思いをしながら読みました。大学に入ると、同じようにえぐられるような思いをしながら読んだ人がいることを知って色々解釈を話し合いました。卒業論文のあとがきにも書いた「あの時直子を救う手立てはなかったのでしょうか」という言葉は自分自身に向けたものでもあります。何が正解だったかなんて、今でもわかりません。村上春樹自身が言った「欠落している何かを埋めるために小説を書いている」という言葉に頷くだけです。欠落している何かを探している人が呼応するのかもしれません。

大人になるということ

『ノルウェイの森』に出てくる人物たちがすごく年上に思えていたのに、気づけば自分も三十代。若いころに抱えていたはずの生きづらさも、いつしかうまく付き合えるようになっていました。感情移入していたはずの人物たちにはだんだん「昔こんなこと思ってたんだっけなあ」と思うようになり、ああこれが大人になったということかな、とちょっと寂しいです。

同じ日本文学の専攻の友人が結婚したときに、友人スピーチを頼まれたので手紙を書いて読みました。その最後に、レイコさんの言葉を入れました。

まず第一に相手を助けたいと思うこと。そして自分も誰かに助けてもらわなくてはならないのだと思うこと。第二に正直になること。嘘をついたり、物事を取り繕ったり、都合のわるいことを胡麻化したりしないこと。それだけでいいのよ。

『ノルウェイの森』 より

解釈を共有したからこそ、レイコさんのこの言葉をどういう意図で入れたのかきちんと伝わると思ったからです。その友人とは今でも会って色んな話をします。

ワタナベくんをどうにかこちら側に引き戻したいと思って大学の頃までは連絡をとっていましたが、結局彼はこちら側には戻ってきませんでした。死に囲まれ、いつまでもいつまでも直子の影を追いかけています。

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